変わる大学入試!

第1回正解のない時代に、自らの答えを正解にできる力を

2020年度。現在の中学1年生が受験生となるころ、大学入試制度が大きく変わります。その内容はまさに革命と例えても良いほどで、私たちが知っている大学入試とはまったく別物です。では、実際にどう変わるのか、なぜ変わるのか。私たちは、こどもたちは、何をすれば良いのか。6回にわたる連載で詳しくお伝えしてまいります。

世界を席巻した衝撃の研究結果

「今年、アメリカの小学校に入学したこどもたちは、その65%が『今はまだ存在していない職業』に就くだろう」。2011年、米・デューク大の研究者、キャシー=デビッドソン氏が発表したその仮説に、世界が騒然となりました。

これは、あまりに激しい社会の変化速度と、多くの仕事が機械やコンピュータで代替可能となる技術革新を背景に、新たな価値(=仕事)が創出される一方で既存の価値が次々と消滅するであろうと予測したもの。未来学者のトーマス=フレイ氏も「いま世界に存在するほとんどの仕事が、低レベルな単純作業と化す」と警鐘を鳴らしているほか、英・オックスフォード大のオズボーン氏も「今後10年以内に消滅する可能性のある仕事」という、身震いしそうな研究結果を発表しています(図1)。

今後10年以内に消滅する可能性のある仕事(一部)
銀行の融資担当 スポーツ審判 不動産ブローカー レストランの
案内係
保険の審査担当 動物のブリーダー
電話オペレーター レジ係 ネイリスト クレジット審査係 集金人 パラリーガル
ホテルの受付 時計修理工 税務申告代行者 彫刻師 苦情処理 簿記・会計
監査事務
映写技師 塗装工 メガネ等の技術者 造園作業員 建設機器
オペレーター
訪問販売員

(図1)出典:論文「雇用の未来 〜コンピュータ化によって仕事は失われるのか〜」

The University of Oxford's Dr.Michael.A.Osborne著(2013)

思えば確かに、私たちが幼いころ「携帯電話ショップの店員」という仕事はありませんでした。一方で、セルフレジの登場により、レジ係という職に就ける人員数は確実に減りました。ほんの10年前「世界で最も入りたい企業」の一つに数えられた優良企業のリーマン・ブラザーズは、もう存在すらしていません。

この現実は、既存の価値観に沿ったキャリアプランや学力養成は、安定どころかリスクになる可能性さえはらむことを意味しています。高度成長期のような「こうすれば安泰」という正解など、もはや存在しないからです。

こんな時代において強く問われるのは、人間だからこそ持ち得る思考力・判断力・表現力。つまり「何が正解か分からないからこそ、社会がどう変わろうと生き抜ける・自らの答えを正解にできるクリエイティブな力」が世界標準となるのです。

人材ボーダレス化の中、生き残れないこどもたち

ところが、その礎となるべき日本の教育はどうでしょう。「自ら正解を創る」どころか、自分で考える経験が極めて少ない、正解主義の暗記型能力を重視し、育ててきました。

もちろん、正解を覚える力も大切です。しかし、人材がボーダレス化する中、我が国が猛烈な危機感を抱いたのが、それ一辺倒になることでした。「かたや豊かな発想力を持った海外の優秀な人材、かたや決まった答えをお行儀よく覚えることだけ教え込まれた日本のこどもたち。グローバル市場経済における人材的価値の差は絶望的だ」と。

この状況は、海外や外資企業で働く場合に限った話ではありません。日本の某大手電気機器メーカーの新卒採用者はここ数年、その約半数が外国人です。日本人が日本で働く機会すら、海外に奪われているのが現実なのです。折しも世間では、「その業務は教えてもらってないのでできません」などと平気で言い放つ若者の仕事観も社会問題化し、正解主義の弊害ではないかという声も挙がっていました。

センター試験廃止、そして多様な判定基準を導入した新入試制度へ

こうした社会状況を受けて見直されることになったのが、大学入試センター試験。いわば正解主義の集大成であり、共通一次と呼ばれた頃も含め、約40年にもわたって頂点に君臨したこのセンター試験の廃止が、今回の入試制度改革の中核です。

まさに大改革ですが、注意したいのは、暗記や正解主義を全否定しているのではないこと。それらの力も問うた上で、さらに知識を実地に応用できる力、すなわち先述の「思考力・判断力・表現力」なども総合評価する試験に変えようというのです。

これは「学力が高い」という言葉が持つ意味に、大きなパラダイムシフトが起こることを意味します。得た知識(基礎学力)を再現する「インプット→アウトプット」から、知識を“使う”「インプット→アウトカム」の力へと、学力の定義が変わるということなのです。

しかし、思考力・判断力・表現力とは具体的に何でしょうか?どうやってそれらの能力を判定するのでしょうか?そこで次回以降、新入試制度の詳細についてお伝えしたいと思います。お楽しみに。

※当コラム記載の情報は2015年10月15日現在のものです。変更される場合もあります