変わる大学入試!

最終回「アクティブラーニング」における、ふたつの誤解

大学入試制度改革の動きと並行して、教育界では「アクティブラーニング」という学習様式が注目されていますが、そこには大きなふたつの誤解があるようです。最終回となる今回は、新・大学入試制度を見据え、実際問題として子どもたちはどんな学習をすればよいのか、私たち大人は何に気をつけねばならないのか、一緒に考えてみたいと思います。

アクティブラーニングの流行

アクティブラーニング(以下、AL)とは「能動的学習」と訳されます。子どもが自ら進んで学べる学習形態、あるいは学習しようとする状態そのものを指す言葉です。

手法は様々ですが、そのひとつにPBL(プロジェクト・ベースト・ラーニング)と呼ばれる「課題解決型学習」があります。例えば「過疎化が進む離島において、子育て世帯を呼び込むには?」「女子高生にバカ売れする新しいノートを開発せよ」といったテーマで、調べ学習やグループディスカッションなどを経て課題点を割り出し、解決策を考えていく学習法です。正解のない問題に取り組むという点が、新しい入試で必要な「知識を使う」力に繋がる学習法だとして、実施する学校や塾が増えてきました。

知識のインプットそのものは必要

ただ、忘れてはならないのは、「知識を使う力」は大切ですが、それ以前に「知識そのもの」がなければ、使うに使えないという当然の事実。基礎学力や暗記が不要になったわけではありません

ところが今、教育現場や保護者さんの一部に心配な動きが起こっています。それが「新しい学力」への過度な信奉と、それに伴う暗記型学習の全否定。「覚えるだけなんて古い!これからは知識を使う力だ!」と、やたらとPBL等ばかり重視する動きが見え始めました。これが、ALに対する間違いのひとつ目です。

するとどういうことが起こるでしょうか?正解がないぶん、何をどう答えても間違いとして指摘されない一方で、前提となる知識のインプットはあまり行われない。そんな教育を幼い頃から受けてきた子どもたちがどう育つか……学力低下は目に見えています。

ゆとり教育の再来になりかねない!?

この状況、どこかで見たことはありませんか?そう、あの「ゆとり教育」の時と極めてよく似ているのです。ゆとり教育も、その理念自体は崇高なものでした。受験や教科学習のスコアばかりにとらわれず、社会や生活に即したゆとりある学びを行って「生きる力」を養おうというものでしたよね。ところがその真意は教育現場や社会に正しく浸透せず、単なる「詰め込み教育は良くないからやめよう」「ゆとり=勉強しないでいいゆとり」という間違った解釈と実践に繋がっていきました。そしてその結果は、あなたもご存じの通り。現在のALの潮流は、このときの空気と非常に近いと懸念する専門家も多数いるのです。

知識の獲得と応用、どちらも大事に学んでいこう

ふたつ目の間違いは、ALとPBLが同じものだと勘違いされていること。新・大学入試制度では、能動的な学習姿勢も評価の対象となる可能性がありますから、当然「入試のためにもALをやっておこう」という声が挙がるわけですが、そもそもAL=PBLではありません。PBLは自分で調べたり考えたりする必要があることから、その行動がALだと思われがちなのですが、いくらそれを実施したところで、「先生からやらされた」ものでは、AL(能動的学習)ではないですよね?PBLはあくまでALの手法のひとつに過ぎないのですが、ここが混同されているのです。

自発的に調べたり考えたりしていない時点で決してアクティブ(能動的)ではないのに、ALという言葉のみが一人歩きし、「ディスカッションやPBL的なことをやらせておけばALで、それで学力が伸びる」という曲解が生まれています。果たしてそれだけで本当に能動的な学習姿勢や知識の活用力が育つのか、はなはだ疑問です。

――このように、かつての「ゆとり」と同じように、間違ったAL観が広がり始めています。繰り返しになりますが、これをふまえて私たちが強く意識すべきは、基礎学力(暗記等)を決して軽視してはいけないということ。そして、それは本当にALなのか、知識軽視で形式だけ整えたPBLではないか、見極めて学ばせるということ。これらを決して間違えることなく、知識もその活用力も、能動的な学習姿勢も育てながら、新しい入試制度に臨んでいきましょう!

※当コラム記載の新大学入試に関する情報はすべて計画段階のものであり(2016年3月現在)、変更される場合もあります。