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教科書が変わる!?
中学生の親が知っておきたい「新学習指導要領」

ここ最近、よく耳にするようになった「学習指導要領が改訂されるぞ!」という話。しかし正直、学習指導要領が変わると言われても、ピンとこない方のほうが多いかもしれません。では、このような言い方だとどうでしょう? 「教科書の中身が変わる」――
教科書の中身が変われば、学習内容も変わります。そして学習内容が変われば、ふだんの学習対策も変わってくるのは必然です。子どもたち自身はもちろん、私たち親にも変化が求められます。

では、なぜ変わるのか。どう変わるのか。いつ変わるのか。そして、どうすればいいのか。中学校の学習指導要領改訂と、中でも大きく変わる英語学習にスポットを当てて解説します。


 
学習指導要領ってなに?
そもそもどうして変えるの?

学習指導要領とは、各教科で「どんな力を身に付けたいか」や、そのために「こんな教育をしましょう」という、カリキュラムの基準を示したもの。つまり、このカリキュラムそのものが変わるため、それに沿って教科書の内容も変わるわけです。

これまでも学習指導要領は、時代や社会の変化に合わせ、およそ10年に1度のペースで大幅な改訂を重ねてきました。ちなみに前回の改訂実施は2012(H24)年。「ゆとり教育」から、「脱ゆとり」へと舵を切ったことが特徴でした(※)。※中学校における改訂実施年度

それを経て迎えた今回の改訂。背景にあるのは、「情報化」「AIの進化」「グローバル化」など、社会が急速かつダイナミックな変化に直面しているという現実です。昨日の常識が明日には覆るような、まさに「予測不可能な時代」を生き抜く力を育むことが目的。奇しくも、新型コロナウイルス禍に世界中が混乱している現状は、そうした力がいかに重要かを証明する結果となりました。


前回までの学習指導要領改訂の変遷(出典:文部科学省「新しい学習指導要領の考え方」

 
中学校では2021年度スタート。
新しい指導要領で育てたい、三つの力
 
では、具体的にどんな力が必要なのでしょうか。文科省はこれを①「知識・技能」、②「思考力・判断力・表現力など」、③「学びに向かう力・人間性など」の三本柱で定義しています。

①「知識・技能」とは、つまり「何を知っているか、何ができるか」ということ。これは従来の教育でも根幹を成してきた部分です。しかし新しい指導要領では、得た知識や技能を「関連付けたり組み合わせたりしながら深く理解し、実社会で活用する」ことを目指します。つまり「知っているだけではだめ」ということです。

続いて②「思考力・判断力・表現力」とは、①の知識や技能など「知っていること、できることをどう使うか」を意味します。例えば、問題の発見や解決に向けて情報を組み合わせて考え(思考力)、結論を導き出し(判断力)、そうした自分の考えを的確に相手に伝えられる(表現力)能力のことです。

最後に③「学びに向かう力・人間性」とは、①②の学習活動に主体的に取り組む姿勢や、他者と互いに理解し合ったり協働したりしながら社会と関わる能力のこと。やらされているだけなのも、チームワークや思いやりがないのもだめですよ、という意味です。

まとめると、これらがバランス良く備わっている状態が、今後の社会を生き抜く力として目指すもの。すなわち新・学習指導要領の骨子であり、新しい教科書の内容もそれに准ずるということなのです。この新しい学習内容を、中学校では2021(R3)年度から全面実施、高校は2022(R4)年度入学生から適用します。なお、小学校は2020(R2)年度からすでに実施済みです。



学習指導要領改訂のスケジュール(出典:政府広報オンライン)

 
キーワードは
「プログラミング」と「外国語」

今回の改訂でベースとなっているのは、先にも述べた社会の「情報化」「AIの進化」「グローバル化」です。各教科ともそれを反映した改訂が行われますが、特に影響が強く表れたのが「プログラミング教育」と「外国語(英語)教育」だと言われます。

プログラミング教育自体は、技術・家庭科の授業においてすでに実施されていましたが、新しい指導要領ではより専門性が高まり、「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングによる問題の解決」(を行う)という文言が盛り込まれました。例えば、SNSやメッセージアプリなどの課題を考察し、自身で作るチャットプログラムに反映するといった高度な内容が想定されています。

一方、外国語(英語)の変更点を端的にまとめると、「学ぶことが増え」、かつ「難易度も上がる」ことだと言えるでしょう。前述した社会のグローバル化を念頭に、英語を「使う力」を重視したためで、いわゆる英語4技能と呼ばれる「読む・聞く・話す・書く」のうち、特に「聞く」「話す」の比重が高くなります

中でも「話す」技能については、「やりとり」「発表」の二つに細分化。これまでの4技能から「4技能5領域」で設定されます。これは従来の「話す」力を伸ばす教育において、プレゼンテーションやスピーチなど「話す内容を事前に用意する」ケース(=発表)には対応できても、考えや気持ちなどを伝え合う対話力(=やりとり)育成が不十分であったという考えがあったためです。実際の授業では、ニュースや身近な話題をもとに英語で意見交換したり、質問し合って発展させたりといった運用が想定されています。

 
学ぶ単語数が増え、
授業は英語で実施

そうした学習環境を実現するための具体的な学習内容・方法の変化としては、「学習する単語の増加」「オールイングリッシュ」の2点は必ず押さえておくべきでしょう。

まず、習得語彙数(学ぶ単語数)は、現行の1200語から1600~1800語に増えます。単純に約1.5倍になる計算です。加えて、「話す」技能における表現をより広げるために、これまで高校で履修していた文法の一部も前倒して学習することになりました。

また授業は、原則として英語で行う「オールイングリッシュ」です。先生の説明、質問や発表など、あらゆるコミュニケーションが英語で展開されます。ただし、先生が使う語句や表現は「生徒の理解の程度に応じた英語を用いる」ように指示されており、少なくとも「習ってもいない言葉が授業でどんどん出てくる」といったことはなさそうです。必要に応じて補助的に日本語を用いることも許されており、「日本語禁止」というわけでもありません。しかし、日常的な英会話に近い形で授業が進められるのは間違いなさそうです。
新しい学習指導要領における、中学校英語の主要変更点まとめ

 
暗記や英訳・和訳一辺倒から、
英語での思考や口述重視の入試へ

こうなると気になるのが、高校入試への影響でしょう。中学校の新指導要領は2021年度から一斉実施ですので、在学中にこれを迎えるお子さんは特に注意が必要です。例えば2020年度に中学2年生だった場合、3年進級と同時に新しい教科書で学び、しかもその内容で高校受験に挑みます。そこは高校側も配慮して入試問題を作成するでしょうが、学習する単語や文法が急に増えることは事実です。学習ペースに戸惑いを覚えるお子さんもいらっしゃるでしょう。改めて、中2までに学習した内容を確実に反復定着しておくことが不可欠と言えそうです。

また、入試傾向にも変化が生じ始めています。従来の、英訳・和訳を中心とした設問ばかりでなく、自分の考えを述べる英作文や教科横断型(理科の知識がないと解けない英語の問題など)といった、英語「で」考える問題が増えてくると予想されています。

ほか、東京都立高校入試では「話す」力を見る目的で、2022年度から「スピーキングテスト」を実施する予定です。現在(2020年度)の中1が、その初年度生となります。詳細は未定の部分もありますが「タブレットなどの端末に受験生が解答音声を録音する」「11月の第4土曜~12月の第2日曜までの週末または祝日に実施」といった内容が公表済み。本来の高校入試とは別に、同テストだけがかなり早い時期に実施されることにも注意が必要です。

いずれも、まさに①「知識・技能」、②「思考力・判断力・表現力」、③「学びに向かう力・人間性」を伸ばすという趣旨が、色濃く表れた入試となっています。こうした新形式の入試は今後、全国的にも広がっていくものと考えられますが、受験だけが学習する意義ではないことはご存知のとおりです。子どもたちが生きる未来に想いを馳せつつ、社会の変化や新学習指導要領の意図を正しく理解し、早めに対策をしていくことが欠かせなくなってきそうです。
 
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